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浜田省吾とシングルヒット曲

浜田省吾のCDについては、アルバムに関してはいくつかのミリオン・セールスを記録している。しかし、シングル売上に関しては全般的に低調だ。

 そんな中で、唯一の大ヒットを記録したシングル曲が「悲しみは雪のように」だ。

 この「悲しみは雪のように」は、1992年にシングルCDとしてリリースされ、200万枚近くを売り上げた。
 記憶されている方も多いと思うが、この曲はドラマ「愛という名のもとに」の主題歌として使われ、そのタイアップが奏功した。浜田省吾にしては珍しい取り組みだった。

 「愛という名のもとに」では、毎回浜田省吾の曲がBGMとして流れ、それを楽しみにドラマを視聴するファンも多かった。
 ちなみに、このドラマでは唐沢寿明と江口洋介が大学時代の友人(と同時に恋敵)という役所で共演し、その11年後の2003年に名作「白い巨搭」でも二人は主人公として共演した。

 その「愛という名のもとに」について、当時プレイボーイ誌でハウンドドッグの大友康平が疑問を投げかけていたことを記憶している。
 それは、ドラマに登場する友情があまりに安っぽくて、「浜田省吾兄貴の曲が泣く」という指摘だった。
 遠山も同様の印象を持っていたため、その意見に深く頷いていた。

 セールス記録の上では、「悲しみは雪のように」がブッチギリの存在感を示しているが、この曲が浜田省吾の代表曲かと問われれば、それは違うという思いを持つファンは多いだろう。
 一般的な浜田省吾の代表曲と言えば、「J.BOY」「MONEY」「もうひとつの土曜日」あたりをイメージするのではないだろうか。

 「悲しみは雪のように」は、どちらかと言えば地味な曲と言う印象が強い。

 それにもかかわらず、「悲しみは雪のように」のセールスが金字塔となっているのは、やはりドラマとのタイアップのマジックという結論になるのではないか。
 テレビで広くプロモーションされれば、必然的に多くの人々がその曲を耳にする。そして、それがメガ・ヒット曲を生み出す。そんなシステムが出来上がって、テレビ抜きではCDセールスが考えられない状況となってしまった。

 もちろん、インディーズから這い上がってくる逞しいミュージシャンもいる。だが、そんなミュージシャンもブレイクする段階では、やはりテレビの力を借りていることが多い。

 つまり、ヒット曲とテレビは密接な関係にあるということだ。言葉を換えると、テレビの巨大な広告力に頼らないと、日本の音楽業界では生き残れないという構図が出来上がってしまった。

 浜田省吾はテレビ経由で曲をセールスするのではなく、直にファンと接するライブで支持されてきたことは何度も述べた。
 すると、テレビ・ドラマとのタイアップでセールスした「悲しみは雪のように」は、どうしても異色の存在となる。
 昔からのファンにとっては、この曲がこれだけ売れるなら、もっと売れても良い曲はたくさんあるというのが偽らざる心境ではないだろうか。

 以上のような理由もあって、遠山はこのミリオン・ヒット曲に対する思い入れは少ない。(もちろん、メロディーや歌詞が優れていることは確かだが、他にももっと脚光を浴びても良い曲があると思うと、感情的に判官贔屓になるのかもしれない。)

 このように比較的に地味な曲であっても、テレビでプロモーションされることによって、そのミュージシャンの代表曲として世間的に認知される現象がある。
 繰り返すまでも無いが、それだけテレビやマスコミの影響力は巨大ということだ。また、歌番組で取り上げられるランキング情報は、本来は極めて多岐に渡るはずの音楽的嗜好について、画一的な序列意識を植え付ける。
 つまり、ランキングのトップ10に入らない音楽は、優れた音楽では無いと判決されるような状況だ。

 これはあらゆる商売でも共通する現象だ。何か商品をPRしたいと思い、必死で商品の良さをうたった広告を出しても、なかなか良い反応を得るのは難しい。
 しかし、何かのきっかけでテレビ番組でその商品が取り上げられると、瞬時に凄まじい問い合わせが殺到する。そして、ウソのように商品が売れてしまう。
 今なら、みのもんたが健康番組でお墨付きを与えた商品の売れ行きをリサーチすれば、その影響力を実感できるだろう。
 でも、テレビで報道されないが、目立たないけれどももっと良い商品はあったりするものだ。

 そんなテレビやマスコミの神通力を期待して、事業をする人はマスコミに取り上げられようとプレス・リリースに躍起になる現実もある。
 実際、遠山も少ない経験ながらマスコミに取り上げられた実績はあり、その反響や第三者に与える信用感について、恩恵を授かったこともある。
 そんな時には内心、「自分なんかよりも、もっとその分野でのスペシャリストはいるから、その人にインタビューして貰った方がいいかもしれない。」と思うことはあった。

 要はマスコミに取り上げられる情報だけが全てでは無いのだ。テレビの情報だけを頼りに音楽をチェックしていたら、ほぼ永遠に浜田省吾とは出会えない。
 リスナーというお客様と対面するライブを最重要視するミュージシャンが存在するように、マスコミには登場しない優れた商品やサービスも多く存在する。
 そうした商品を選ぶ目を失ったら、人生の中で損をすることもあるだろう。商品やサービスを優れているかどうか判断するのは、マスコミではなくあなた自身なのだから。

投稿者 : 2006年04月12日 02:20 [ 管理人編集 ]