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浜田省吾と著作権

インターネットや図書で情報検索をして、それをビジネスの資料として活用する場合に、著作権を理解しておかないと都合が悪いことが多い。
 自分では知らないうちに他人の著作権を侵害し、後から損害賠償請求をされるような事態になったらたいへんだ。

 音楽業界では特に著作権の権利関係がややこしい。著作権ビジネスとでも言うべき複雑な利権が絡むようだ。
 これには浜田省吾も頭を抱えている。

「 シングル(CD)を売るというシステムがどういうものであるかっていうのは-ユーザーの人は知る必要もないことなのかもしれないけど、いかに露出していくかと。そして、その中で最も力を持ってるものはダントツにテレビであると。テレビの中で最もたくさん露出するものはドラマの主題歌であったりCMであったりするわけですけど、当然そこからたくさんのヒット曲が出てそれがたくさんのお金を生んでるがために、ガッチリとしたシステムがもうでき上がってるんですよね。具体的にじゃあこの楽曲の何%、この楽曲が入ってるアルバムの何曲分の著作権をどういうふうに分配しろ、しなければ使わない-もうそういうところなんですよ。だから、ものすごくいい作品だからシングル盤として世の中に露出して、それがメガヒットになっていくというような時代ではもうないんですよね。」(BRIDGE 2001年10月号より)

 ドラマやCMのタイアップをとるためには、各方面に著作権により得られる収益を分配しなくてはならないという世知辛い話ではないか。
 比較的最近でも、浜田省吾の曲に対してこうしたタイアップの打診はあったようだ。ある程度具体的な話になり、スポンサーも曲を気に入ってくれたようだが、あまりにもえげつなく収益を吸い上げられるので断ったそうだ。

 ファンとしては単純に浜田省吾の曲をCMやドラマの名場面で聴きたいと願うわけだが、彼の事務所経営を考慮すると、得体の知れない金を宣伝費としてジャブジャブ使えない。そこにファンの想いに応えられないもどかしさはあろう。

 ところで、音楽業界で著作権と言えば、日本音楽著作権協会(ジャスラック・JASRAC)の話題を避けて通ることができない。

 JASRACとは、音楽の創作者の著作権を一括管理し、利用者から料金を回収して、手数料を差し引いて著作者に報酬を分配する団体だ。
 テレビで流れるBGMや喫茶店の有線放送など、著作者自身が個別に利用状況をチェックするのは事実上不可能だ。テレビ局や有線放送事業者も、いちいち個別の著作権者に料金を支払うのでは作業量が膨大となってしまう。

 そこで、JASRACが窓口となってテレビ局等と大口の契約を結び、著作権の細々とした作業を一手に引き受けているのだ。著作料の徴収を一括にしてプールし、独自の配分方式によって著作者に分配をすることで、個々の徴収・分配作業負担を軽減している。

 だが、JASRACとの契約で問題が無いわけではない。カラオケでは使用料や権利者への分配方法が未決のままビジネスが先行するという弊害も生じた。
 また、音楽のネット配信については著作権者が個別に管理が可能なのに、それも従来メディアと混同して一括管理されることの効率の悪さも指摘されている。

 更には、消費者から見て著作者に著作料が正当に分配されているか確認する手段は無く、著作者にとっても適切に分配されているという根拠は持てない。
 この音楽著作権の権利料は、消費者にとっても著作者にとっても不透明なままだ。あなたが浜田省吾のカラオケを唄った場合に、そのうちいくらが彼の事務所に支払われるか把握する術はない。

 それから、JASRACは著作権侵害に対する法的対応も行っている。意図的な著作権の権利侵害は問題外だが、日常のビジネスで無意識のうちに著作権侵害をしてしまう可能性もある。

 例えば、自分のブログに浜田省吾の曲の歌詞を書く場合、一定のルールを守らないと著作権法違反となってしまう。
 ビジネスで公表する資料に、ホームページで見つけた資料を勝手に複写するのもご法度だ。

 しかし、著作権者の権利を過剰に保護しすぎるのも問題がある。それでは他人の研究資料を活用して、更なる高度な創作をしていく可能性を摘み取ってしまう。
 そこで、著作権法ではある程度の条件のもとで、ホームページや書籍の内容を紹介することを認めている。

 具体的には、公表された著作物に関して、批評や研究の正当な範囲内で、出所を明示すること等が条件となる。
 こうした条件を満たした紹介を「引用」と呼んでいる。

 ビジネスの現場で公表を前提とする文書を作る機会は多いものだ。その際に、参考文献やホームページの出所を明示する引用は、最低限のルールとして押さえておかなくてはいけない。

 何にしても、他人の著作物には敬意を払い、無断複写ではなく正当な引用を心掛ける配慮が求められるだろう。

投稿者 : 2006年04月12日 02:23 [ 管理人編集 ]