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ロングセラーとSEO

 「ベストセラーよりロングセラー。」

 これは著作物の作者であれば、誰もが憧れるものだろう。ベストセラーとは短期間に凄い売上げを記録することで、ロングセラーとは長期的に継続して売れ続ける現象だ。
 一瞬で爆発的なセールス記録を作って、印税収入がガッポガッポ入るベストセラーも捨て難いが、それよりも長い間売れ続けて人々の記憶に定着するロングセラーの方が制作者冥利に尽きるだろう。

 浜田省吾の楽曲は、もちろん1992年に200万枚近く売り上げた「悲しみは雪のように」のようなベストセラーも存在するが、その多くはロングセラーと言えるだろう。
 アルバムやDVD等の売り上げもロングセラーの傾向はあるだろうが、カラオケで歌われる曲は古いものが多い。

 「J.BOY」や「もう一つの土曜日」は1986年、「MONEY」は1984年にリリースされた曲だ。
 30代から40代のビジネスマンが集うカラオケでは、誰かがこれらの曲を必ず歌うのではないだろうか。

 このように多くのファンに愛され、口コミによる評価で売れ続ける曲はロングセラーの称号を得ても良いだろう。

 その一方で、口コミでの支持とは対極の商業音楽も存在する。

 何よりも売り手側の論理に基づく、えげつない程のマーケティング主導の音楽だ。別に音楽だけに限らないのだが、商品の品質やサービスレベルが低次元な状態なのに、広告だけは巨費を投じてガンガンに行うパターンだ。
 あまりにも売り込み臭が強すぎると、いかがわしさを感じてしまう。

 そのような迷惑な情報タレ流しは、今日の日本に溢れている。テレビで、週刊誌で、インターネットで。

「ブレイク間違いないのイチオシ新人」
「1ヶ月で100万円稼げる新規ビジネス」
「寝ているだけで痩せられる最終ダイエット術」

 遠山はホームページによる営業活動だけで生業をしているわけだが、眉唾な情報や胡散臭い特ダネを発信しているホームページを見ると辟易する。特に一方的に送られてくる迷惑メールには、怒りを覚えてしまう。

 そんなホームページで商売をするには、SEO(Search Engine Optimization)という技術の話題が避けて通れなくなってきている。

 一般にホームページで商品を購買したり情報調査をしようとした場合、まずはYAHOOやGoogleという巨大検索エンジンを利用するのがセオリーと言えよう。
 これはネット初心者でも知っている常識だ。

 検索エンジンのフォーム欄に、調査したいキーワードを入力するだけで、有力な手がかりが掲載されたホームページがズラズラと並ぶのだから、実にお手軽だ。調査をするのに費用が取られるわけでもない。

 商品を販売したい側は、その検索エンジンの表示結果に対して、自分のホームページがより目立つ位置に並ぶようにしたい事情がある。
 実際に表示結果がより上位にある程、ホームページが閲覧して貰える確率は高くなる。表示結果が2ページ以降になった場合は、ほとんど人目に触れなくなってしまう。

 商業立地に例えるなら、検索エンジンの1ページ目に表示されるホームページは、銀座や渋谷の繁華街、または国道沿いの一等地に店舗を構えているのと同様の効果が見込める。
 しかし、表示結果が2ページ目以降の場合は、途端に人通りは途絶える。10ページ目以降となっては、もはや砂漠や月面に立地するに等しい。

 このような事情はネットショップのオーナーは先刻承知しているので、検索エンジンの上位に食い込ませようと涙ぐましい努力が続けられているのだ。
 SEOとは、特定キーワードに関して、検索エンジンの上位に表示させるための技術ということになるが、ここでもマーケティングのための過剰競争が繰り返されている。

 大多数の情報を検索する側にとっては、自分が知りたい情報をより素早く把握したいのが本音だ。
 目的の情報がわかりやすく解説され、そこで見つけた商品に魅力を感じるなら、検索ユーザーも満足するだろう。

 しかし、検索をかけた結果、表示されたホームページは宣伝ばかりで有益な情報が何も無かったら、二度とそのホームページに訪問しない。

 販売する側は、とにかく検索エンジンでの表示順位を上げることに腐心して、その対策にばかり精を出す。それが効を奏すると、情報量が不足していても上位に表示されることはある。
 すると、そのホームページを踏んでしまった訪問客は、外れをつかんだ感覚に陥る。

 検索エンジンは、現在のところは多くのホームページから紹介のリンクがされているホームページが、より価値の高いページだと解釈するシステムになっている。
 この特性を逆手にとって、自分のホームページとは何の関係も脈絡もないホームページとリンクを結ぶ行為が一般化している。いわゆる相互リンクだ。
 この相互リンクを乱発するサイトが、表示順位を上げるという神話が成立しており、このリンクをする作業のみに没頭する業者も存在している。

 このように、“売りたい”“広告をしたい”という思惑を全面に出すことがマーケティングと勘違いすると、ユーザーの感情や要望を漏らしてしまう。すると、検索エンジンの上位表示には成功したが、売上は伸びないという現象に悩むことになる。

 ロングセラーを志向するなら、拙速な大量広告は慎むべきだ。顧客から確実に評価して貰えるサービス体制を確立し、情報提供量も充分に用意するなど、足許を固めることが何より大切だろう。

投稿者 : 2006年04月12日 02:55 [ 管理人編集 ]