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年齢層別と個の満足

最近の浜田省吾のライブでは、MC(演奏休止中に演奏者がトークをする)の時に恒例行事となっている儀式がある。
 それは、浜田省吾自身が「オレがライブをやっていく内は、ずっと継続していく」と宣言しているものだ。

 一体、何だろうか?

 答えは「年齢チェック」である。浜田省吾も、ライブに参加するファンの年齢構成が気になるらしい。
 観客に向かって、「10代の人、手を上げてー」と尋ねる様子は、微笑ましくもある。

 実際の統計は無く、遠山の感覚的計測では、その年齢層別は以下のとおりだ。

10代   5%
20代  10%
30代  30%
40代  35%
50代  15%
60代   5%

 ファンのメイン・ボリュームは30代から40代の年齢層ということだろう。しかしながら、10代から60代まで幅広いファンを集める魅力はさすがと言うべきだ。

 このような幅広い世代に対して、遠山が参加したライブでは次のように声をかけていた。

 どうだろう?
浜田省吾の言葉の一つ一つは、様々な年齢層のファンのことを考えて発せられていることが理解できるのではないだろうか。
これはファンに対する実に細やかな配慮だと思う。親子ほども離れた年齢層のファンの心を、的確に捉えるのは彼のキャリアのなせる技だろう。

 ちなみに、1992年時点ではファンクラブ会員の平均年齢は26.2歳だった。(1992年会報「ALL ABOUT SHOGO HAMADA」より)。
 全くの余談であるが、遠山は当時23歳でこの年に結婚をした。その頃のライブ参加者は、当然ながら皆若かった。

 しかし、2005年のライブに参加した時には、ファンの中心層は前述のように30~40代となっており、親子連れも増えていた。何か同窓会に参加するような感慨深さがあった。
 年を重ねていくのは、浜田省吾のファンばかりではなく、実は日本の人口動態にも大きな変化が起きている。

 いわゆる少子高齢化社会の予兆である。

 すごく単純な話だが、ある夫婦が子供を二人産めば、長期的に人口は維持される。一人しか産まなければ、夫婦が死亡した場合は人口は一人分減ることになる。
 これを数値化したのが合計特殊出生率という指標だが、これが2.05以上であれば人口は維持される。しかし、2004年6月時点で合計特殊出生率は1.29となっている。間違いなく若年層は貴重となり、人口は減少していくことは明らかだ。

 一方で戦後のベビーブーム世代(いわゆる団塊の世代)は、2007年から2010年の間に60歳に達し、多量の定年退職者が発生する。この期間の退職金総額は80兆円にも達すると言われ、その使途が大きなビジネス的関心を呼んでいる。

 つまり、子供や若年層は減少し、定年退職者は激増するというのが、日本経済の目前の課題になっている。家計に例えれば、働き手がいなくなり、扶養家族ばかりが増えるという状況だ。

 更に製造業を中心とした中規模以上の企業は、日本国内の賃金負担に耐えられず、工場をどんどん海外に移転している。今は中国やベトナムへの転出がブームだ。
 国内に残った企業は、賃金コストを抑えるためにパート・アルバイトや派遣社員の雇用を増やし、逆に正社員を削減している。2002年の総務省調査によれば、全国のパート・アルバイト比率は30.5%にも達するという。

 少子高齢化で働き手が少なくなることを嘆きながら、貴重な働き手の就労の場所は減少し、必死で見つけた仕事がアルバイトというのが、これからのありがちな問題となる。

 そんな時代を生き抜いていくビジネスマン世代は、働き方とか生き方の発想を変えていかなくてはいけない時にきているのではないだろうか。

 極論すれば、多数の日本人の頭の中は、未だに高度経済成長期の幻想をひきずっていると言える。
 それは、大企業に勤めて、大量生産・大量販売に関わって良い収入を得て、郊外に一戸建てを買うというライフプランだ。それが悪いとは言わないが、実現し難い夢になっていくのは間違いが無い。

 何故なら、大量生産モデルは海外へ移転し、日本国内で生き残る産業は、極めてニッチな需要に対応するものになっていくことが予測できるからだ。
 顧客のわがままとも言える細かい注文に応えることが出来る事業しか、日本国内では生き残れないだろう。それは、大企業では苦手な(効率の悪い)手法であり、若き起業家達がニッチな市場を開拓していくスピリッツに期待したい。

 音楽も工業製品も、同一規格品を大量に売りさばく時代は終わったのだ。各年代や地域ごとの事情に応じて、柔軟なサービスを提供できる機動力こそが必要だ。
 浜田省吾もファンの年代や地域別の特性の把握には熱心だ。その真正直な姿勢を見習いたい。

投稿者 : 2006年04月12日 02:50 [ 管理人編集 ]