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浜田省吾と幸福論

 人間にとって何が幸福かってことは永遠のテーマになるだろう。とにかく衣食住は足りて、生活が満たされることを優先する人もいれば、精神修養を第一に掲げる人もいるだろう。

 人それぞれで大切なものも違う。遠山の場合は、とりあえず好きな時に渓流釣りができて、パソコンは四六時中ネットにつないでいれば、かなり満足してしまう。
 もちろん、家族や友人も大事だし、仕事も順調にこなしたい。

 大事にしたいのは、恋愛だったり、友情だったり、ビジネス的成功だったり、趣味を極めることだったりもする。
 このあたりは、人によって千差万別だろう。

 幸福の条件として、それが物欲であればわかりやすい。

「純白のメルセデウス プール付きのマンション 最高の女とベットでドン・ペリニヨン」

 これはある有名な歌手が作った歌詞だが、このように欲しいものを列挙すれば、どれだけ手中に収めるかで満足度を図ることもできる。
 でも、ここに挙げられたモノを手に入れるには、かなり頑張らないとキツそうだが。

 それほど物にはこだわらない人もいるだろう。とにかく三食に不自由なく暮らせれば、それで充分だという向きもあろう。
 でも、独りだと寂しいから友達や恋人は欲しいと思ったりする。

 浜田省吾も、デビューしたての頃は世俗的な成功を夢見ていたそうだ。アメリカで流行したロックで一山当てて、豪邸でも建てようかという野心はあったという。

 だが、実際に長者番付に掲載されるくらい稼ぐようになると、今度はゆとりがほしくなったそうだ。
 そりゃそうだろう。全国を移動しながら年間に150回近いライブ数をこなし、合間にアルバム制作をするという過密スケジュールだったら、儲かるだろうがプライベートな時間は限られてしまう。

 企業戦士でも同様だが、超多忙になると自分のことに構っている時間は無くなってしまう。“オレはバリバリに働いて充実しているんだ”と強がってみせても、休日も無く帰宅したら疲れて寝るだけの生活に嫌気が差すこともあるだろう。

 そんな追い立てられるような仕事漬けの毎日を送っていると、本を読んだり映画を観たり、家族や友人・恋人とゆっくり過ごす時間が欲しいと思うようになるものだ。
 でも、時間にゆとりがあってもサイフにゆとりが無いのはカンベン願いたい。

 すると、ビジネスで成功していても、無尽蔵な時間を持て余していても、どちらにしても不満は生じるということになる。これは困った。人とはいかに小難しい生き物なのか。

 そんな人間の幸福についての考察を、浜田省吾は次のように述べている。

「 基本的には幸福になるための要素は三つあると思う。
 それはものすごくシンプルなことで、一つは“健康”であること。それから、“平和”であること。それは世の中が平和であることもそうだし、自分の心が穏やかであることも含めて。もう一つは“孤独”でないこと。この三つがそろえば幸福なんだと思うんです。
 そりゃあ、やりがいのある仕事だとか趣味とかほかにもいろいろ細かいことはあるかもしれないけど、基本的にはひとりぼっちじゃなくて健康で平和だったら、それは幸福なんだと思う。その三つを自分のために揃えて、幸福になりたいと思うのなら、それを勝ち取ってやるという努力が必要なんですよね。」(JUNON 1990年9月号より)

 これは実に的確な指摘だ。健康でなければ何も始まらないし、平和でなければ恐怖に怯えなくてはならない。孤独は人を追い詰める。
 しかも、この三つの要素を得ていくためには、努力が必要だとも言っている。

 つまり、健康を維持するためには、食生活や運動量に気を配らなくてはいけない。平和を享受するためには、その存在を脅かす動きに警戒を怠ることはできない。絶えず、社会情勢に関心を持つことが必要だろう。
 孤独を脱するためには、進んで人とコミュニケーションを図らねばならない。

 このように、幸福を形成する三要素は、受身では待ち人のところに来てくれないのだ。自分から積極的に取り込んでいく努力が不可欠といえよう。

 また、人は初期の段階では自分だけの幸福で満足できる。これら三要素がスロット台のようにゾロ目で揃ったら、とりあえず満足するだろう。
 だが、その満足感は永続しない。

 次の段階として、“孤独ではないこと”と関連するのだが、自分が社会とつながることで役立ちたい。人に認められたいという意識が働くようになる。
 そのようにして、幸福への欲求のレベルは上がっていく。

 単に物欲に振り回されているうちは、足もとの幸福には気づかない。当たり前だと思っていたことに関心を持ち、身の回りのものを大事にして、人とは進んで接する。
 それを意識的に繰り返せば、自ずと幸福を実感できるものなのかもしれない。

投稿者 : 2006年04月12日 03:22 [ 管理人編集 ]