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浜田省吾と鬱病

 うつ病(鬱病)はストレスに起因する精神の病気で、生きる活力が落ち込み、その結果として体のあちこちが不調となる症状が表れる。
 現代日本では、5人に1人は一生のうちに一度はうつ病を経験すると言われるほど、精神的に参ってしまう人は増えている。

 これほどうつ病の患者が増えているということは、花粉症と同様に文明病・国民病として認知されるべきかもしれない。

 どうやら“ロックスター”浜田省吾もその洗礼を受けてしまったようである。

 彼が精神に変調を来たしたのは、1992年の夏だ。

 この年、「悲しみは雪のように」が大ヒットし、シングルチャートの売上1位を8週間連続で確保した。いわゆる浜田省吾の社会的評価が絶頂に達した時期でもあった。
 これは実に皮肉な現象といえよう。世間で一番認められたときに、その張本人がうつ病で表舞台に出られる状態では無かったのだ。

 つまり、うつ病というのは社会的成功者であっても容赦なく陥る可能性がある。

 この時期を振り返った浜田省吾の言葉を引用しよう。

「 その92年の夏、僕はちょっと精神的なバランスを崩してしまいまして。2週間ぐらい全く家から一歩も出ないで、居間の窓に-まあ窓から空が見えるんですけど、ずーっとボーッと2週間何もせず。」
「ええ。非常にヤバイ状態だったんですよ。かつてない、いちばんヤバイ状態で。その時のイメージ-その時は楽曲なんて作れる状態じゃないですから、それから少しずつ少しずつ立ち直って。(中略)僕自身の心の危うさっていうんですか。で、精神の危うさっていうのは、こうやってみんなを見てても、誰を見ててもみんないい奴で、問題も抱えてたりするんだけど陽気な部分もあったりして、でも何かひとつがポロッと壊れた瞬間に、誰もが大きく精神のバランスを崩す可能性を持ってるのが、自分自身の体験からよく分かったんですよ。」(BRIDGE 2001年10月号より)

 どうやら浜田省吾自身も、自分がうつ病になるとは思ってもみなかったようだ。心身ともに健康なときに、自分がバランスを崩したことを想像できるわけはない。
 それだけに、誰もがそのような精神状態に陥ったり、または家族や知人にうつ病になる人がいた場合、その対処法を理解しておいて損は無いだろう。

 遠山も仕事で離婚協議書を作成する機会は多いが、多くの場合、依頼者はうつ病の診断をされている。他にも傷害事件の後遺症として、うつ病が治らないケースもある。
 何かトラブルを抱えると、人は心身の均衡をとれなくなり、睡眠障害などの体調不良に見舞われる。体重が激減したり、逆に過食で急速に肥満になったりもする。
 そんな局面には、何をするべきだろうか。

 まず、うつ病の症状を把握しておく必要があるだろう。その症状は精神面と肉体面の両方に表れる。

 精神的症状としては、集中力が散漫になったり、常に悲観的な考え方をするようになる。人と会ったり話をするのが極端に嫌になり、何もする気が起きなくなる。そして、ただひたすらボーッとすることが多くなる。

 肉体的症状としては、食欲不振、便秘、肩こり、不眠、頭痛、動悸、異常な寝汗、性欲低下、月経不順などが顕著だ。

 こうしたうつ病の症状も、重度の人は外出困難となり就業は不可能だが、軽度の場合は上記のようなトラブルがありつつも何とか仕事をこなしているケースもある。
 だが、そんな苦しい状態が数年も続くこともあり、できれば早期に治療をした方が良いだろう。

 うつ病になった人は、自分の精神が変調していることを理解できなかったり、認めようとしない場合も多いようだ。
 周囲の人がうつ病の傾向に気づいたら、治療を勧めてあげる必要があるだろう。

 その具体的治療法としては、通院をする意欲が起こるまで先ずは休養をとることだ。その上で精神科に通い抗うつ薬の処方をしてもらう。その後、医師やカウンセラーの指示に従って精神療法を受ける。

 もちろん、うつ病となるきっかけが明確になっている場合は、その問題を解決することも大切だ。しかし、問題に対峙するエネルギーが残っていない場合は、まずは治療を優先しなくてはならない。

 うつ病は治すことが可能な病気であるという認識を広めることも重要だ。精神的に追い込まれた患者は、自分の怠け心のせいだと思い込んで、更に自分を責める傾向にある。
 うつ病の症状が明確になった場合は、まずは休養を取り、1年単位で通院して治療をすることも視野に入れた方が良い。軽症であれば、休業は最低限に抑えて、治療は通院で済むことも多い。

 風邪をひけば内科に通うように、精神が病んだら専門医にかかるべきだ。その方が治癒も早くなる。
 浜田省吾も最も忙しい時期に休養を取り、うつ病の治療に取り組んだ。そして、徐々に曲作りに復帰して素晴らしい作品をリリースし、ライブもバリバリにこなせるようになった。

 もし、うつ病を抱えてしまったときには、急がば回れのことわざとおり、休息をすることが何よりも大事なようだ。

投稿者 : 2006年04月12日 03:27 [ 管理人編集 ]