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熱い熟年と団塊の世代

 浜田省吾のファン層は、ティーンエイジャーから熟年世代まで幅広い。浜田省吾自身は1952年生まれだから、2006年4月現在では53歳だ。
 当然ながら同世代のファンも数多く存在し、その上の年齢層にも支持されている。

 浜田省吾より年上のファンといえば、年代的には戦後のベビーブーム世代であり、いわゆる団塊の世代である。
 この団塊の世代が2007年から2010年の間に60歳に達し、その人数は300万人とも言われる。60歳といえば、多くの企業や公務員の定年退職の年齢だ。
 短期間に大量の退職者が発生するので、その補充は新卒だけでは埋めきれず、人事担当者を悩ませることになる。
 これを労働市場の2007年問題と呼ぶ。

 バブル崩壊以降の雇用抑制が続いたので、どの職場も余剰人員はなく、ギリギリの状態で回っているのが実情だろう。
 そんな中で同時多発的に定年退職者が発生するのだから、現場は悲鳴をあげることになってしまう。
 しかも、折からの少子化進行で新卒の人数は減少傾向だ。補充は簡単ではない。

 また、製造業の現場では、団塊の世代は貴重な熟練工となっている。日本の精密加工を支えてきた熟練技術は、単に若年層を補充するだけでは継承されない。

 このような2007年問題に対して、産業界は定年退職後も雇用延長を図ることで対処しようとしている。
 しかし、経営再建の名の下に、リストラや賃金カットに耐えてきた団塊の世代の中には、定年後の継続勤務に関しては複雑な感情もあるだろう。
 それでも、団塊の世代に対する社会的要請は高いと言える。

 では、晴れて定年を迎える団塊の世代のビジネスマンには、リタイア後にはどのような選択肢があるのだろうか?

 最も羨ましいのは、退職金を得て充分な貯蓄をし、経済的な不安が無い状態で趣味に生きる生活だろうか。これは本当にあやかりたいものだ。
 ちなみに、2007年からの3年間で動く退職金の総額は、80兆円にも達するという試算もある。

 他にはボランティアや地域貢献に励む人々もいるだろう。地域の世話役等で、新たな才能を発揮する場面もあるかもしれない。

 仕事を継続する場合も、勤務していた会社の定年延長に応じてもよし、気分を変えて他の会社で働くのもいいだろう。
 かつてのリストラとは逆の風が中高年に吹くかもしれない。

 こうして考えてみると、団塊の世代のリタイア後の人生は、明るく熱いものになるかもしれない。
 かつての定年退職後の侘しいイメージは、払拭される可能性もある。

 しかし、問題が無いわけではない。

 熟年世代にも重荷はのしかかっている。住宅ローンが定年までに払い終えられない人も多いだろう。同様に遅くに子供ができた人は、高等教育の学費支払いに頭を抱えなくてはならない。ひょっとしたら、子供がニートになっていて、その自立を促すために家庭内でひと悶着あるかもしれない。
 それから、親が存命であれば介護の問題も抱えているだろう。

 必死の思いで長い間働いて老後の資金を貯めても、それを狙う詐欺師も存在する。巧妙な口車に乗せられて、数十年の集大成とも言うべき貯蓄を、ほんの数ヶ月で掠め取られるリスクもある。具体的な手口については、別の章で詳細する。
 そこには古きよき時代の日本の美徳は通用しない。

 それでも、戦国の世で人生50年と言われた頃を考えれば、今の熟年世代は熱く生き生きとしているのではないだろうか。

 団塊の世代が高度経済成長期を演出し、バブルとその崩壊を経て、豊かなリタイアを迎えたのだから、まだまだ何かをやってくれるという期待はかかる。
 何しろ80兆円もの資産を手にするのだから、周囲もその動向が気になって仕方がない。

 また、熟年世代に属する浜田省吾は、今でも現役のロックスターであることは間違いない。そのライブに熱狂する10代の少年少女も存在する。
 これはとんでもない偉業だと思う。浜田省吾がデビューをした1976年頃に、ロックというジャンルの音楽で生計を立て、その30年後もライブでティーンエイジャーを夢中にさせるなんていうことを、誰が想像できただろうか。
 もちろん熱狂的なファンは、熟年層にも多い。

 余談だが、遠山の微かな記憶では、初めて浜田省吾の存在を知ったのは小学生の時で、小学館の「小学六年生」という雑誌の情報からだった。その記事の中で「浜田省吾のライブを座って聴こうなんてとんでもない」というキャッチコピーがあったように記憶している。
 子供心に「浜田省吾って、観客を座らせないんだ」なんて思ったものだ。そんなライブを30年も継続している浜田省吾には、本当に頭が下がる。
(追加すると、初めて浜田省吾の曲を聴いたのは、大学に入学した18歳の時だった。)

 浜田省吾はライブ一徹で頑張っている。同世代の熟年層も、会社を定年退職したくらいで老け込むはずは無いだろう。
 日本を経済大国に導いてきた原動力は、間違いなく現在の熟年層だ。まだまだパワーのあるところを随所で魅せてくれるはずだ。

投稿者 : 2006年04月12日 03:15 [ 管理人編集 ]